異分野技術の融合による次世代の医療基盤技術の構築に向けて

摘要

近年，コンビナ卜リアルケミストリー並びにハイスループットスクリーニング技術の発展により，多数の低分子化合物の網羅的なスクリ一二ングが可能になり，医薬品の候補化合物探索のスピードアップが図られている.一方で，候補化合物が難溶解性であったり，血中消失速度が速かつたりと物性的な問題や体内動態の問題などでドロップァゥトする化合物も多数存在する.このような問題を解決するために，難溶解性薬物の可溶化，体内半減期の改善，徐放化や標的部位へのターゲティング能付与，最適な投与経路の開発など，これまでに蓄積された製剤化技術が適用され医薬品化されている.このように薬物の投与部位から作用発現部位に至るまでの薬物の生体内の動きをトータルシステムとしてとらえ，各種技術を利用して最高の治療効果を得られるようにする薬物送達技術がドラッグデリバリ一システム(Drug Delivery System: DDS)である.このDDSを駆使した製剤は，薬物の薬理効果を高め，副作用を軽減することが可能となるため，患者のQuality of Life (QOL)向上に大きく貢献するものと期待されている.また，上述の低分子化合物医薬品の開発に加え，バイオテクノロジーの発展も日進月歩であり，ホルモン，抗体，サイトカインなどの生理活性物質が医薬品化され，さらに遺伝子治療や核酸医薬，ワクチンなどの抗原たん白質なども次世代の医薬品として開発が進められている.