副鼻腔気管支症候群に対する内視鏡下鼻内副鼻腔手術の長期成績

摘要

これまでは副鼻腔気管支症候群（Sinobronchial syndrome：以下SBSとする）に対しては副鼻腔根本手術（主にCaldwel1-Luc法のアプローチ）を行っても下気道病変は改善しないいう報告が一般的であった．一方，内視鏡下鼻内手術（Endoscopic sinus surgery：以下ESSとする）は鼻副鼻腔の形態と機能を可及的に保存し副鼻腔炎を治癒に導くため，副鼻腔根本手術とは異なる手術成績が期待される．今回我々はSBSに対するESSの治療効果を検討した．対象は1989年から1993年の5年間に東京慈恵会医科大学耳鼻咽喉科でESSを行ったSBS12例である．上気道の改善度は自覚的にはアンケート調査により，他覚的には筋骨洞の内視鏡所見で判定した．下気道については自覚的にはアンケート調査で，他覚的には1秒率で検討した.検討の時期は手術1年後に行った．上気道の自覚的な改善率は91．7％，他覚的な改善率は83．3％で良好な結果が得られた．また下気道においても自覚的には全例が改善以上であり，他覚的にも全例に1秒率の改善を認めた．また術後6年以上の長期成績についてもアンケート調査で検討したが，上気道症状は83．3％，下気道症状も83．3％と長期成績についても良好な結果が得られた.今回ESSが良好な成績を得られた理由は，すべての副鼻腔への処置が可能で，副鼻腔の限界壁の粘膜は固有層を残すため鼻副鼻腔の形態を可及的に保ち，副鼻腔炎を治癒に導くことができるため吸気の加温，加湿，除塵などの下気道を保護する機能が復活し，下気道に好影響を及ぼすものと考えた．