腹腔内臓器の血管解剖と複合組織弁としての空腸移植の応用

摘要

空腸は形成再建外科領域において使用頻度の多い再建材料の一つであり，その多くは，下咽頭·頸部食道の全周性欠損に対して用いられる。空腸は血流を確保した組織弁としての移植が必要であるが，その特異な血行形態や組織構成を利用すれば，長い血管茎を得たりいくつかのセグメントに分けることも可能であり，最近では他領域の再建手術にも応用されている。また，遊離空腸移植術は粘膜面の再建のみならず，組織充填や壊孔形成防止の吻合部補強を目的として，渠膜筋層弁や腸間膜弁などの複合組織弁としての移植も行われるようになってきている。本稿では，空腸および腸間膜の血管解剖を詳述するとともに，腸間膜弁?費膜筋層弁を含んだ複合組織弁移植としての空腸移植術について述べる。