家族の主観的困難度·負担調査票の作成と信頼性·妥当性の検討-統合失調症患者の家族を対象として-

摘要

患者の発病に伴う家族の主観的な困難や負担を把握する尺度として，家族の主観的困難度·負担調査票（Family Burden and Distress Scale；FBDS）を作成した。 まず，家族の主観的な困難や負担に関する30項目からなる予備調査票を作成した。次に，その結果を因子分析を用いて解析し，3つの下位因子24項目からなる調査票を作成した。それぞれの因子を，因子I：患者の疾患に起因する主観的な負担と抑うつ，因子II：病気の知識がないことによる混乱や将来の不安，因子III：患者との関係に関する困難さ，と命名した。 調査の結果，Cronbachのalpha係数，再テスト法におけるPearsonの相関係数とも高値で十分な信頼性が得られた。 また，State－TraitAnxietyInventory（STAI）との間に有意な正の相関を認めたこと，心理教育施行後に3因子すべてが有意な低下を認めたこと，Highexpressed emotion（HighEE）家族がLowEE家族と比べ国子Iと因子IIIが高い傾向がみられたことから，十分な妥当性が検証された。 FBDSは家族の主観的な困難や負担を簡便に幅広く測定できるため，心理教育場面の他，さまざまな疾患や場面での応用が期待できる。