指向性表示による自然な立体表示－調節輻輳矛盾の解決を目指して

摘要

従来の立体ディスプレイは，人間の立体視機能の生理的要因を部分的にしか満たさないため，調節と輻輳が矛盾する，運動視差が不完全であるといった問題を有している．超多眼表示や高密度指向性表示は，これらの問題点を解決し，自然な立体表示を実現できる可能性がある．これらの表示原理について説明する．高密度指向性表示による網膜像形成と滑らかな運動視差の発生について説明する．また，高密度指向性表示に対する調節応答の測定結果を示し，調節可能範囲の拡大が，光線の指向性で決まる眼球結像系の被写界深度の拡大で説明できることを述べる．最後に，自然な立体ディスプレイの実用化の課題について述べる．