北茨城五浦炭酸塩コンクリーションの成因とその石油地質学的意味

摘要

茨城県北茨城市五浦海岸にはメタン湧水に由来する日本 最大級の規模を誇る炭酸塩コンクリーションが露出してい る（上田ほか，2005）。メタン湧水性炭酸塩は地下から湧 出するメタンが海底付近で嫌気的メタン酸化により消費さ れ，重炭酸イオンへと変化し，海水中のカルシウムイオン と反応することで形成される。一般に，海溝から大陸縁辺 域にかけて認められるメタン湧水性炭酸塩はその大半が表 層堆積物中で生成される微生物起源メタンに由来し，小規 模で点在する場合が多い。一方，五浦炭酸塩コンクリーショ ンは大局的に層状で，少なくとも1 km×1.5kmの範囲に 広域的に分布している。そのため，その形成時に高フラッ クスのメタン流出が長期間継続していたと推察され，メタ ンの供給源として天然ガス鉱床からの大規模なガスリーク や鉱床の破壊などが関係している可能性がある。しかしな がら，これ草で五浦炭酸塩コンクリーションを形成したメ タンの起源は十分に明らかにされていない。本研究では， 炭酸塩コンクリーションの産状や同位体組成，トラップさ れている炭化水素ガスの特徴に基づいて，五浦炭酸塩コンクリーションの成因や石油システムとの関係を考察した。