食べ物の安全と安心を考える 一国の役割とリスクコミュニケーションー

摘要

私たちは食事として1日3回，365日食べ物を口にし ている。食べ物は基本的に安全なものだと信じていれば 安心じて食べることができる。しかしここ数年，人々は 食物の安全性に対して大きな不安と不信を抱いている。 特に1986年英国で発生したBSE牛から，肉骨粉の輸入 による2001年の国内BSEの発生，それに続く流通上の 事故，表示偽装など，食品に関する不正な行為が続き， 消費者の安全性への不信が爆発した。それ以降も輸入食 品の汚染，有害物質の混入，残留農薬など食糧の生産か ら，流通，加工，調理の過程で，食品への不信が続いて いる。食品は食べることで直接に生体への影響があることか ら，科学的評価による安全が表示されても，それらを口 にする場合，やはり不安だという心理的圧迫は除きよう がない。しかし食品への不信と不安があれば，健康を維 持するための適正な食物の摂取は望めない。食品の安全 に対し，国民の不安や不信感が昂揚し食生活への影響が 大きくなったことから，国では食品の安全管理並びに消 費者への不安の除去を図るために食品安全法を創設し， 法律に基づいた食品安全委員会を内閣府に設置した。