液相析出法による3次元規則構造を有する多孔質酸化チタンの合成とその物性

摘要

3次元的に規則配列させたPSラテックス粒子をテンプレートとして用い，液相析出法によりその粒子間隙にTiO_2を析出，充填させ，その後熱処理によりテンプレートを除去することにより3次元的に空孔が規則配列した多孔質TiO_2薄膜を得ることができた。 複雑な表面へも均一に金属酸化物の析出が可能であるという液相析出法の特徴を活かし，テンプレートであるPSラテックス粒子間隙を隙間なくTiO_2で充填することが可能であった。 液相析出法の反応時間が短い場合，熱処理後3次元規則構造が維持されず破壊されてしまったが，反応時間4時間以上ではPSラテックス粒子の除去された後が空孔となり，この空孔が3次元的に規則配列した多孔質構造が維持されていた。 このようにして得られた3次元多孔質TiO_2薄膜の光学特性を反射スペクトルより検討したところ，明瞭な反射ピークが観察され，フォトニック結晶としての特性を有していることが明らかとなった。 ブラッグの式より得られた3次元多孔質TiO_2薄膜のTiO_2の屈折率を算出したところ，約2.0であり，単結晶のアナターゼ型TiO_2の屈折率よりも小さい値を示した。 本研究では，テンプレートとして直径199nmのPSラテックス粒子を用いたが，異なる直径のPS粒子によるテンプレートでも析出は可能である。 液相析出法は，マイルドな環境下での酸化物薄膜合成法であり操作も非常に簡単である。 本研究で示したように複雑な構造を有する基材への均一な膜析出に適した方法であるといえ，フォトニック結晶の作成法として有望な方法であるといえる。