分子生物学的手法を用いた飼育展示下動物における ノ、トトリコモナス原虫の感染実態解明とその意義

摘要

ノヽトトリコモナス{Trichomonas gallinae 以下 「TG」）は，ハトゃァトリ科鳥類，猛禽類等の多様な鳥 類の上部消化管に感染する原虫で，TG感染症を引き起 こす.TG感染症は上部消化管における潰瘍やチーズ様 結節の形成が特徴的な疾患で，食欲不振や摂食困難など の臨床症状を呈する.TG感染症は幼鳥での発症が多く， 成鳥にTG感染が生じても多くは不顕性キャリアとなる が，宿主の免疫低下時には発症し.重篤化すれば死に至 る.TG感染は親鳥からヒナへの給艇，機械的伝播，TG 感染鳥の捕食などによりTGを経口的に摂食することで 成立する.国内では愛玩鳥類などでTG感染症の存在が 知られている力5',学術的な調査報告はドパトからのTG 分離例が2例存在するのみで，分子疫学的報告は存在し ない.また，世界的に見ても動物園飼育下鳥類でのTG 感染にMする報告は我々の知る限り存在しない.一方，海外では野生下のハトゃ猛禽類でTG感染症が報告され ており.近年では本症を主因とする野鳥の大量死の報告 がある.し力、し，TG感染がなぜ爆発的に拡大し，死に 至るほどの重篤な症状を起こしたのかなどは明らかに なっておらず，本症の病態については今も未解明な部分 が多い.