子どもと高齢者の熱中症予防策

摘要

熱中症による死亡は，高齢者と幼児が若年成人より高頻度で発生する。 ここではそのメカニズムを体温、循環調節から概説するとともに，その予防策を提案する。 　 子どもの熱放散特性：同一深部体温あたりの発汗量（g／m~2/h）は,思春期前の子どもが若年成人より少ない。 この少ない発汗量は，多量発汗を要求する条件ほど顕著になる。 子どもは,少ない発汗量を皮膚血流量の顕著な増加（とくに頭部や躯幹部）で代償し，運動や暑熱ストレスに対処する（図1）。 そのため，環境温度が皮膚温より低い条件では，子どもは皮膚血流量の増加と熟放散を促進しやすい体格特性（大きな体表面積/体重比）とが相侯って，深部体温を若年成人と同等に調節できる。 しかし．汗が唯－の熟放散手段となる環境温度が皮膚温より高い条件では，子どもの大きな休表面積／体重比が熟獲得を促進するとともに，未発達な発汗機能が大きく影響し，子どもの深部体温は若年成人より大きく上昇する。 夏季スポーツ活動時における子どもの深部体温は，有酸素能や万歩計で求めた運動強度とは関連せず，皮下脂肪厚と強く関連したことから．肥満児ほど夏季スポーツ活動時において高体温になりやすい。 高温下において，子どもの血圧が若年成人より大きく低下するとの報告から（Jokinen etal．1990）．子どもの未発達な血圧調節が窺われる。 皮膚血管の過度な拡張と未発達な血圧調節が子どもでよく観察される熟失神の原因であろう。