新しい目で旧き良きものを観る

摘要

醸造協会が創立100周年を迎えるという。 現在，私が会長をさせていただいている日本生物工学会は，大阪醸造学会として1923年に設立されて以来，先年80周年を迎えた。 前身で既に会誌を発行していた大阪高等工業学校醸造会（1910年結成）より数えれば，やはり100年近い歴史になる。 ともかくも，長く続くということは大変なことだと思う。20世紀後半の生物学の大ブレイクの中で，「醸造なんてもう旧い」などとのたまう輩もおるやに聞いているが，どっこいしっかり生きている。 それどころか，近年また勢いを得ているようにも感じられる。これは筆者の勝手なものの見方だが，大学の微生物系の教員は年を取ってきて，いよいよ自分の研究の最後期を迎えると，発酵、醸造学か生態学に向かうように思われる。 それと歴史。 まあ歴史はともかく，なぜ発酵、醸造なのか，生態なのかと，以前から不思議に思っていた。 しかし気がついてみたら，自分がその道を歩き始めていた。