高等植物における抗酸化酵素の転写後調節機構とストレス耐性獲得への利用

摘要

植物は，強光や乾燥などさまざまな環境ストレス条件下において，活性酸素種（AOS）の生成を伴う酸化ストレスにさらされる．移動の自由をもたない植物は，酸化ストレスに対する防衛手段の一つとして多くの抗酸化機構を発達させてきた．アスコルビン酸ベルオキシダーゼ（APX）は，高等植物や真核藻類を含めた光合成生物に広く存在する抗酸化酵素として知られている．高等植物APXは，葉緑体のストロマとチラコイド膜，細胞質，ミクロボディーにアイソザイムが局在し，それぞれの抗酸化系の鍵酵素として機能している．さらに，APXを含めた抗酸化酵素は，環境ストレス耐性植物作出のための有用なソースとしても注目されている．したがって，APXを中心とする抗酸化系の環境や生育条件の変化に伴う発現調節機構の分子レベルでの解析が急務となってきている．このような状況の中で，最近筆者らは1）高等植物の葉緑体型APXアイソザイムの選択的スプライシングによる組織特異的な転写後調節機構，2）葉緑体型APXの過剰発現によるストレス耐性植物作出および本酵素の特性について検討した．以下，これらを紹介し，抗酸化系に関連する細胞内レッドクス制御について考察してみたい．