カラマツ天然林における核ゲノムとミトコンドリアゲノムの遺伝的変異

摘要

マツ科植物では、核ゲノムが両性遺伝、葉緑体ゲノムが父性遺伝、ミトコンドリアゲノムが母性遺伝とそれぞれのゲノムが異なる遺伝様式を示す。 今までのマツ科植物の研究では、核ゲノムにコードされるアロサイムに比べて、ミトコンドリアDNA（mtDNA）では高いレベルの集団分化が観察されている。 これは、種子散布が限られること（ミトコンドリアの遺伝子流動は種子散布に依存している）と集団の有効な遺伝子数が小さいためであると考えられている。したがって、マツ科植物ではmtDNA変異は種内の遺伝的構造を明らかにする有効な変異であると考えられている。 カラマツ（Larix Kaempferi）はマツ科カラマツ属に属し、わが国に固有な高木の落葉針葉樹である。本州中央部の山地帯から亜高山帯の比較的限られた地域に隔離分布しており、その北限は宮崎県蔵王山の馬ノ神岳である。