マツ樹体内におけるマツノザイセンチュウの個体群構造-病原力の強い2つのアイソレイトを接種した場合-

摘要

同一枯死木内に生息するマツノザイセンチュウ（以後線虫と略する）の病原力には大きな変異がないことが知られている。 その原因を明らかにするために，以前我々は強病原力線虫アイソレイトと弱病原力線虫アイソレイトを1本のマツに接種し，その後マツ樹体内で増殖した線虫の個体群構造をPCR-RFLP法（Aikawa et al.，2003）により調査した。その結果　 2アイソレイトの接種の順序に関係なく、マツ樹体内の線虫はほほ病原力の強いアイソレイトにより占められることを明らかにした（第113回日本林学会大会）。 この結果により、病原力の強い個体群が優占的に増殖することで、樹体内の線虫の病原力が均一になる可能性が示唆された。 では、強い病原力を示す2つの線虫個体群が1本のマツに侵入した場合、その後のマツ樹体内の線虫個体群構造はどうなるのだろうか？ 我々は、病原力が非常に強いにもかかわらず、既存の強病原カアイソレイトとは異なるPCR-RFLPバンドパターンを示す個体群を野外から採取することができた。そこで本研究では、バンドパターンの異なる2つの強病原カアイソレイトを1本のマツに接種し、その後マツ樹体内で増殖した線虫を既往の方法と同様にPCR-RFLP法で解析し、マツ樹体内における線虫の個体群構造を調査した。