メダカの群泳を可能とする小水路の物理環境を探る－流速，底質を環境因子とした実験－

摘要

1999年の環境省レッドリストの見直しにおいて，水田地域の象徴ともいえるメダカ（Oryzias latipes）が絶滅危惧Ⅱ類（絶滅の危険が増大している種）に指定されたことは，、社会に大きな衝撃を与えた。メダカのRDB種指定は，かつて普通にみられた生物が普通でなくなるほどの環境変化が水田地域に生じてきたことを示す。このような水田地域の環境変化に関しては，圃場整備によるビオトープの減少や農薬，肥料の多投入による影響等多くの問題点が指摘されている。 水路に目を向ければ，その規模の大小に関わらず，コンクリート化，直線化が進み，流速は増大し，流れは単純化してきた。 これらが水路の生物生息場としての機能に影響し，メダカのRDB種指定を招く一つの要因となったと考えられる。 水田やその周辺を主な利用場所とするメダカにとって，水田に隣接する小水路ほ，規模は小さくとも重要な空間である。 メダカによる小水路の利用可能性を考えるには，流速の増大などの物理環境に対する抵抗性や底質の違いなど異なる環境に対する選好性を考慮する必要がある。 さらに，このとき，メダカが偏に「群」を形成して行動する習性をもつことを踏まえておく必要がある。 本研究では，メダカが群泳可能な小水路の物理環境について検討するため，二つの実験を行った。 実験1では流速条件に対する群形成の抵抗性について，実験2では群としての底質条件に対する選好性について検討した。