成人の朝食欠食の規定要因に関する分析―「食育の現状と意識に関する調査」の個票データを用いて一

摘要

食習慣の変化により，食行動の乱れが指摘されて いる.食行動の乱れの中で大きな問題となっている ことのーつは，食事をきちんと取っていない欠食で ある.欠食するとエネルギー不足になるのはもちろんだが，文部科学省（2009)によると.朝食欠食は 肥満や高脂血症等の生活習慣病発症を助長すると言 われている.厚生労働省『国民健康·栄養調査』(2011) によると，朝食欠食率は，平成7年で8.0%,平成16 年で10.5%,平成23年で12.6%と年々増加傾向に ある.年齢階級別に見てみると，15-19歳よりも 20代や30代，近年では40代でも朝食欠食率が高 くなつている.朝食欠食の研究には，子供（小·中· 高·大学生）を対象にしたものが多いが，成人の方 が深刻であるとも言える.成人の朝食欠食に関する 研究を行った有宗他（2012)は，内閣府『食育の現 状と意識に関する調査，2010』の個票データを用い て順序nジット·モデル分析を行い，男女ともに朝 食欠食率が高いのは，若年者，未婚者，勤務時間が 不規則な者であり，男性は配偶者との死別·離別経 験，職場の食意識が，女性は家庭内および居住地域 の食意識が成人の朝食欠食率に影響を及ぼすことを 明らかにしている.し力'し，有宗他（2012)には改 善の余地がある.まず，有宗らの研究では，朝食欠食と説明変数，および説明変数間の関係が必ずしも 明らかになっていなかつたが，本研究では，パス図 を用いて変数間の因果関係に関する仮説を立て，朝 食欠食の直接要因について分析を行った.また，『食育の現状と意識に関する調査，2010』では，回収率 が若年者ほど低く，高齢者ほど高くなつており，有 宗らの研究では，相対的に高齢者のデータに重みが 付いた結果となっている.そこで，本稿では，同調 査の年齢階級別の回収率の違いに注意し，重み付け(ウェイト）を用いた分析を行った.