シリーズ現代の危機を考える④: 農法変革の歴史論理

摘要

本書は北開東畑作地帯に位置する茨城県鹿島郡旭村およびその周辺における農民層の生産力形成の歴史過程の把握を通じて、当該地域においていかなる生産関係（土地所有、利用）が生み出されてきたのか、そのメカニズムを、限られた地域の事例からでほあるが論理化することを試みた意欲作である。 また本書はその題名に「農法変革」という言葉があることからも分かるように、地域の歴史的、風土的性格を統合する主体として「新たな生産力と自立を生み出す……積極的なエネルギー」を帯びた「勤労」農民のあり方に着目することを通じて、農民のヴァイタリティーが生産力に結実してゆくダイナミックな過程をリアルに描ききることに成功した貴重な研究の成果でもある。 近年の農業経済学関連の研究を評者が散見する限りにおいて、とりわけ大学等に籍を置く若手の研究者の手になるもので農法論を踏まえた研究が極めて少ない現状のなかで、本書は農業経済学にあって経済学一般にはない奥深さを垣間見せてくれる、農法論の重要性を再認識させてくれる好著であると言えよう。