地域住民を対象とするむらづくり人材育成事業の実態と特徴台湾の農村再生条例における培根計画を事例として

摘要

現在の台湾の農村は様々な問題を抱えている。農村地 域の若者の多くが都市に移住したことで，人材、人手不 足や少子高齢化が深刻化している。また，都市部に偏つ た発展政策により農村地域の整備が遅れる一方，無秩序 な農舎や農業住宅の乱開発によって起きる農村地域の環 境や景観の破壊も看過できない。政府はこれまでに様々 な農村整備事業を行い，農村地域の公共機能を補いつつ あるが，農村の環境保全や農村に相応しい整備，農村地 域での人材育成，農村景観の保全，防災といった部分へ の対応はまだまだ不十分である 。こうした問題を解決するため，2010年7月に農村再生 条例化が立法院を通過し，同年8月に公布，施行され た。条例は農村の活性化と再生を促進し，生産の基礎条 件を改善し，農村の生態及び文化を維持し，生活の質を 向上し，豊かで美しい農村を建設することを目的として いる2)。また政策実現のための予算は，特別支出金専用 の農村再生基金を設立して捻出することとされ，2011年 から10年間にわたって2000億元が投入され，4000の農 村社区は2)と60万世帯に利益をもたらすとしている3)。農村再生条例は，主に農村地域における防災施設や農 村整備事業を担当する農業委員会水土保持局（以下，水 保局と表記）が主管している。条例の下で農村再生を進 めるには，ボトムアップや住民参加により社区住民が農 村再生計画を作成する前に，当事者の住民を対象に水保 局が設計した培根計画（=人材育成事業）はを行うこ とが義務づけられている（条例第30条）のが特徴である。