『エデンの東』のレタス

摘要

野菜が高騰したとマスコミは書きたてる。確かめるため、近くのスーパーをのぞいてみた。 半割りハクサイが三八九円、ホウレンソウが一把一九九円、青首ダイコン一本が一九九日、中主レタス一個が三九九円。なるほど、いい値が付いている。 私はレタスの前でしばらく足を停めた。 レタスと出会ったさまざまな場面が、走馬灯のように脳裏をめぐる…。 初めてレタスと出会ったのは、昭和二十九年二九五四）　 である。 この年は冷夏に見舞われ、東京都、多摩の農村では、植えたばかりのイネがイモチ病などで全滅する水田も生まれた。裸になってしまった水田を眺めて、鶴川村（現町田市）　 の精農家たちは、農業改良普及所に駆けこみ、悲痛な叫びをあげた。