サラブレツド育成馬の性腺機能と 被毛の変化に及ぼす光線処理の効果

摘要

雌雄サラプレッドに1歳の冬から2歳の春にかけて光線処理を実施し、性腺機能、被毛の変化と内分泌 変化に及ぼす影響を調べた。日本中央競馬会(JRA)日高育成牧場で飼育されていたサラブレツド種62 頭(雄31頭、雌31頭）を用レヽ、30頭(雄15頭、雌15頭）については12月20日から4月10日までの4ヶ月間 光線処理を実施し、残りの32頭は対照群として自然光のみで飼育した。光線処理は、馬房内天井付近に 100ワット白色電球を設置し、明期14.5時間、暗期9.5時間の照明条件を人為的に作出した。実験期間中 は毎月1回採血するとともに、56頭については2歳の1月及び4月に被毛の評価を行った。内分泌学的変 化を調べるために、プロラクチス黄体形成ホルモン（LH)、卵胞刺激ホルモン（FSH)、インヒビン、テス トステロン、エストラジオール一17 /3 、プロジエステ口ンの血中濃度を測定した。被毛については1月で は両群間に差は認められなかったが、4月では光線処理群は対照群と比べて被毛が冬毛から夏毛に変化 する明らかな効果を示した。血中ホルモン濃度については、雄の光線処理群では1月から血中プロラク チスFSH、インヒビン、テストステロン濃度が対照群と比較して有意な高値を示した。血中LH濃度は光 線処理群で上昇する傾向が認められた。雌の光線処理群では血中プロラクチン、インヒビン、LH 、ェスト ラジオール-17 B 、プロジエステ口ン濃度が1月から4月までの間に有意に高い値を示したが、血中FSH 濃度は1月にのみ対照群が光線処理群よりも有意に高い値を示した。また、雌では光線処理群で排卵曰 の早期化が認められた。以上の結果から、育成期のサラブレツドに光線処理を実施することによって被 毛を冬毛から夏毛に変化させる効果があることが判明した。これらの効果は、光線処理により分泌量が 増加したプロラクチンの作用であろうと推察された。光線処理により育成馬でも視床下部'下垂体'性 腺軸が刺激され、雌では排卵時期が早くなることが判明した。光線処理により馬体に起きた変化は、生 理的レベルの変化であり、安全かつ簡便な方法であることから馬の育成管理上有益な方法であろうと 推察された。