ビタミンA抑制による肉質改善のメカニズム

摘要

わが国の肉用牛生産を維持，発展させるひとつの方策は，海外で生産することの難しい上質、高級な牛肉をっくり，できる限り安い価格で消費者が購入することである。 そういう意味において，肉の中に脂肪交雑（サシまたはマーブリング）があることは，高級牛肉であるための必須条件である。 脂肪交鰍ま筋肉内に脂肪組織が現れることである。 脂肪組織の増加は脂肪細胞の数が増加し，細胞が大きくなることによってなされる。 牛の筋肉内脂肪では，脂肪細胞の数は生後14カ月齢以降において増加することが示されている（Cianzioら，1985）。 筋肉内の脂肪細胞は皮下および筋肉内の脂肪細胞より著しく小さいことが示され，筋肉内の脂肪細胞はより未熟であり，その出現は皮下や筋肉間脂肪組織と比較して遅れて生じると考えられている。 和牛はホルスタイン種やアンガス，へレフオード種などの外国種と異なり，一般的に脂肪交雑が入りやすい品種であることが世界的に知られている。 あるアメリカの研究者はアンガス種と比較してアメリカ和牛の筋肉内脂肪組織は未熟であり，脂肪細胞の分化（増加）能力が高いことを述べている。 和牛がサシの入った牛肉を生産するのは，筋肉内における脂肪組織数の増加が活発であることによると考えられる。