スギを中心とする針葉樹の発現遺伝子の収集とそれらの機能推定及び類型化に関する研究

摘要

このたびは林木育種研究奨励賞を賜り，身に余る光栄と存じております。ご推薦くださいました皆様ならびに選考にあたりご高配いただきました林木育種協会の皆様方に心から感謝を申し上げます。 私の研究は，被子植物にはない形質を持つ針葉樹のうち，日本林業で重要な樹種であるスギヒノキについて，その形質を支えている遺伝子を網羅していくことから始まりました。 針葉樹は，種数こそ被子植物に比較して少ないものの，建材として，またパルプの原料として用いられ，世界的に林業上重要な種を多く含みます。 主に林業上利用される材の部分は特有の組織構造を持っていますし，さらには種々の有用化合物の素材となる有機化合物を含んでいます。 近年，植物では色々な性質を左右する遺伝子の解析が急速に進み，モデル植物では全遺伝子情報の網羅も急速に進んでいます。 針葉樹はマツ科とそれ以外のグループに大きく分けられると考えられていますが，マツ科ではテーダ松などで非常に多くの情報が蓄積しているのに対し，マツ科以外のヒノキ科などの針葉樹に関する遺伝子情報はそれまでほとんどありませんでした。