全身症状を呈さない乳房炎におけるKlebsiella pneumoniae および薬剤感受性

摘要

全身症状を呈さず乳汁変性のみがみられる乳房炎(mild case of mastitis ：軽度乳房炎)は，酪農農場 において多発している病気であり，抗生物質の投与による治療効果が期待できない場合が多い。また， 軽度乳房炎は.乳質および乳量の低下につながり.その蔓延が急性乳房炎に進行するために，酪農家 の経済的損失が大きい。過去2年半にわたり発生した軽度乳房炎2,075検体（分房乳）の乳汁における Klebsiella pneumoniae (KP.)の月別分離率は平均7.5% (3.6-13.7%)であり，7月で12.4%, 9月で 13.796とほかの月と比較し有意（p<0.05)に高かった。軽度乳房炎から分離された^尸.菌株では，基質 特異性拡張型/?ラクタマーゼ産生菌のスクリーニングに用いる5種類の抗生物質に対して比較的高 い薬剤耐性率が記録された（セフタジジムCAZ ： 8.0%,セフトリアキソンCTRX ：16.6%,セフォタキ シムCTX ：18.5%,セフポドキシムCPDX:11.9%.ァズトレオナムAZT:9.30/o)。 I尸.菌株が10検体 以上分離された4農場における薬剤耐性率の比較では，CAZ, CTRX, CTX, AZT,ミノサイクリンが 1農場で，テトラサイクリンは1農場で，他農場に対し有意(p<0.05)に高い値となった。この結果か ら，農場間で異なった薬剤耐性菌が常在し，軽度乳房炎が乳汁を介した耐性菌蔓延の温床となる可能 性があることが示唆された。