DNAは細胞内で三王らせん、四重らせん構造を形成しているか？ - DNAの多様な高次構造を安定化する細胞内環境因子に注目

摘要

DNAの標準構造である二重らせんは，シンプルで美しい．また，ワトソンークリ）ック型塩基対からなる二重らせん構造は遺伝情報の保持と伝搬のためにきわめて合理的でもある．しかし，DNAは塩基配列と周辺環境に依存して，多様な非標準構造を形成し，遺伝子発現の制御などに重要な役割を担うことも明らかになりつつある．特に，二重らせん以外の構造を形成する可能性が高いと考えられているのが，グアニンに富んだDNA鎖（G′鎖）とその相補鎖であるシトシンに富んだ鎖（C鎖），およびアデニンとグアニンに富んだ鎖（プリン鎖）とその相補鎖であるチミンやシトシンに富んだ鎖（ビリミジン鎖）である．G鎖とC鎖はそれぞれが四垂らせん構造を，プリン鎖とビリミジン鎖は三重らせん構造を形成できる．たとえば，G鎖はヒトゲノム中の30万個所以上に存在することが知られている（1）．特に興味深いことに，G鎖は，C－∽ツCなど様々な疾患に関与する遺伝子の開始領域の直前に局在することも示されている．そのため，G鎖とC鎖，またプリン鎖とビリミジン鎖の形成できる非標準的な高次構造が注目を集めている．