原子力発電所事故由来の放射性核種による環境汚染と生態系への影響

摘要

2011年3月11日の東日本大震災に伴い，東京電力福島第一原子力発電所で全電源が喪失し，原子炉の冷却機能が失われた結果，1号機から3号機まで三つの原子炉で炉心が溶融し. また4号機を含む原子炉建屋が爆発等で損壊する大規模な事故が起きた。津波が原因で事故が引き起こされたとする説がある一方，地震による配管等の破損が事故の引き金とする説もある。後者は，地震国*日本における原発の存在/是非に対する根本的な問いかけと捉えることもできょう。溶け落ちた核燃料が今どこにあるのか不明であり，4号機のプールの中には今なお1500体余りの核燃料がそのまま残されている。福島第一原発では本当の意味での事故の収束と廃炉に向けた作業が今も懸命に続けられているが，いつ完了するか，見通せない。この事故によつて大量の放射性核種が環境中に放出されたが，現在も事故が完全には収束していない意味で，放射性核種による更なる汚染の危機がなくなつたわけではない。