大腸癌における血清中p53抗体の腫瘍マーカーとしての有用性と術後モニタリングの臨床的意義

摘要

近年,分子生物学の進歩によりp53蛋白に対する抗体を血清中で簡便に検出できるようになった。今回,大腸癌に対する血清中p53抗体を検索し他の腫瘍マーカーとの感受性を比較するとともに,切除後のモニタリングによるfollow-upの臨床的意義について検討した。 対象は大腸癌症例86例(男性56例,女性30例)で,入院時および術後経時的に血清を採取し, ELISA法にてp53抗体およびCEA, CA19-9, AFPを測定した。 各腫瘍マーカーの陽性率はp53抗体:45.3%, CEA:36.096, CA19-9:38.496, AFP :8.1%であり,進行度別にはCEAと比べて比較的早期の段階でのp53抗体の有意に高い陽性率が特徴的であるが,進行例での検出率は低値であった。 また,術前抗体陽性例において術後の経時的抗体検索を行い,手術的根治度と血清p53抗体の変動との相関性を検討したところ,術後陰性化例と術後陽性持続例との間には,統計学的な有意差を認めた。 大腸癌における血清p53抗体は, CEAとは独立した因子として大腸癌術後follow-upに有用である可能性が示唆された。