NO合成系の発現調節機構と抗NO剤

摘要

NOは，循環系、神経系の情報伝達にとどまらず，感染、炎症、免疫反応のメデイエークーとして機能し，さらには免疫反応の調節，アポトーシスの制御，発癌など幅広い生命現象にかかわっていることが明らかにされつつある。 NOの多様な生理活性の発現は，NOの無機ラジカルとしての化学的反応性の多様性に負うものであり，その反応機序は次第に明らかになりつつある。 生体内のNO産生は複雑な機構で厳密に調節されている。 NOの生理活性を理解するためには，その生合成のメカニズムとNOの化学的反応性を十分に理解して上で，NO合成阻害剤や抗NO物質を用いてNOの生体内機能を解明しでいくことが重要であると思われる。 そこで本稿においては，生体内のNO合成システムの発現調節機構と現在まで開発されてきた抗NO剤のうち，特にNO合成酵素（NOsynthase，NOS）阻害剤とNO消去剤に焦点をあて，それらの特性について概説する。 また最近，各種NOSノックアウト（KO）マウスが比較的手軽に入手できるようになったが，この様な遺伝子改編動物を用いた生体内のNOの機能解析に関する知見についても簡単に紹介する。