療養型リハビリテーション病棟における入院患者の摂食喋下能力と栄養指標の関連性

摘要

入院患者の栄養状態の悪化は，免疫機能の低下や創傷治癒の遅延をもたらし，感染性合併症の発生頻度や死亡率を増加させる。 さらに，入院期間の長期化や医療費の増加に繋がり，国民の医療費抑制の必要性や包括医療等での経費節減の面からも，大きな問題であると考えられる。 外科，内科及び消化器科の領域では，栄養状態が治療成績に直接大きな影響を及ぼすため，入院患者の栄養管理が積極的に行われている。 しかし，長期療養型施設や介護老人保健施設では，長期にわたる緩やかな栄養状態の変化の発見が難しいこと，栄養管理の重要性の認識が低いこと，入院患者の低栄養の治療は診療報酬の対象ではないことなどの理由から，全ての患者に対して積極的な栄養管理を実施している施設は少なく，入院患者の低栄養が問題となっている。 療養型リハビリテーション病棟においても，入院患者は中枢神経疾患後遺症による摂食嚥下障害，運動障害及び意識障害等を発症しているために低栄養に陥りやすく，特に摂食嚥下障害は，低栄養の要因になることが示唆されている。 しかし，摂食嚥下障害と呼吸器疾患合併症や死亡率の関連は報告されているが，療養型リハビリテーション病棟の長期入院患者に対する摂食嚥下能力と栄養状態の関係を検討した報告は少ない。本研究は，摂食嚥下障害が慢性期リハビリテーション患者の栄養状態に及ぼす影響を明らかにするために，摂食嚥下障害の有無と栄養指標の関連を検討した。