脳と心の進化

摘要

ヒトを含めた霊長類では，心のさまざまな働きは主に大脳皮質によって担われている．大脳皮質の最も基本的な機能的、構造的単位は「コラム（幅0.5mm，高さ2～3mm＝皮質の厚さ）」であり，その集団としての領野群が形成する階層システムが並列的に多重して大脳皮質をつくっている．霊長類の進化　 とくにヒト進化に伴って大脳皮質は顕著に拡大してきたが，その拡大進化は「コラムの重複による多重階層システムの拡大、複雑化」として捉えることができる．その駆動力（進化要因）は食性，社会関係，そんて性競争で，これらの多重した要因によって，大脳皮質の多重階層システムはより多重化して発達し，それに伴って，心の働きもより多重化、高度化してきた．ヒト進化でとくに重要なのはワーキングメモリ（思考や推論，言語などの精神活動のペース）の進化で，この働きを担う前頭連合野内のシステムは，主に「言語による社会関係」を要因として発達し，私たちの多様な精神活動が形成されてきたらしい．