礫質河原の自然と昆虫相を守る －鬼怒川中流域における保全の取租み

摘要

栃木県鬼怒川中流域に広かる砂礫質河原は，全国的に失われつつある河原本来の環境と動植物相を現在も維持する場所としてその保全上の価値はきわめて高い。 一方仁外来イネ科草本であるシナタレスズメカヤの繁茂なとにより，この動植物相は危機的状況にあることから，市乳地域住民，研究機関の協働による保全への取り組みか行われている。 わが国には，豊富な降水量と急峻な地形によって形作られた，河川勾配のきつい急流河川が各地に見られる。 そのような河川が，山間の渓谷を抜けて平野へ流れ出ると，河岸には石がごろごろとした砂礫質河原が広がるようになる。一見すると，石ばかりが目立ち植生もまばらで，およそさまざまな生きものが棲んでいるような場所には見えないが，そこには他には見られない独特の自然が存在している。