生物進化と共生説

摘要

葉緑体が原核生物のシアノバクテリア（藍藻）の共生に由来すること，そして，葉緑体の獲得が一度だけ起こった現象であったことは，現在では広く受け容れられている．しかし，葉緑体がいつ，どのように成立したのか，その後どのように九つの植物群に広まったのか，については不明な点も多い．本稿では，真核光合成生物の構成と系統についての知見を整理した．藍藻が宿主に取り込まれて核の支配を受け，葉緑体として成立する過程で，藍藻の包膜の劇的な再編成が起こったことがわかってきた．その後の真核光合成生物の多様化は，緑色藻類と紅色藻類が従属栄養真核生物に共生する二次共生により促進された．ミドリムシ（ユーグレナ）は緑色藻類が二次共生した二次植物の一つである．二次共生がどこで，何度起こったかについて，真核生物全体の系統と構成の研究に関連して盛んに議論されている。