コバルト錯体の光磁気特性

摘要

原子価異性錯体の開発における研究課題として，光応答性物質の開発，室温ヒステリシスの実現が挙げられていた．筆者らは多くの原子価異性錯体を合成し，光応答性の原子価異性錯体を開発することに成功した．また，二核コバルト錯体［（tpa）Co~（II-HS）μ-dhbq）Co~(II-LS)（tpa）］（PF_6）_3が光応答性と室温ヒステリシスを示すことを見いだした．今後は，室温で光応答を示す物質（光応答性原子価異性物質，光スピン転移材料，光磁石）の開発，室温で100K以上のヒステリシス幅をもつ物質の開発が重要な研究課題であり，筆者らの研究室でも鋭意研究を進めていく予定である．こうした材料を開発することができれば，従来の記録媒体より記録密度が1桁以上高く，光による高速書き込みが可能であるという特長を活かし，コンピューターなどの記録媒体として近い将来，私たちの暮らし中で用いられる日がくるものと考えられる．