ドイツ新戦艦のメカニズム 日本戦艦と比較して

摘要

第1次大戦に敗れ，1919年のヴェルサイュ講和条約によって厳しく保有艦艇などに制限を受けたドイッ海軍は，1921年に至って軽巡エムデンEmdenの建造を皮切りに，ようやく艦艇の新造を開始する。老朽化した旧式戦艦の代替として最初に建造されたのが1933年に就役した装甲艦ドイッチュラントDeutschlandで,その後装甲艦，戦艦の建造が続く。この頃，日本ほか各国では，第1次大戦後のポスト·ジュットランド型とでもいうべき戦艦の建造と，既存艦の近代化改装を実施しており，ドイツの新しい戦艦の建造は，各国で始まる新戦艦の建造時期でもあった。しかしドイツには戦艦の建造に際して技術的な空白時期があつたため，ビスマルクBismarckに代表される新戦艦では，先進的な設計とともに案外保守的な面も多く見られる。ここではドイツ新戦艦のメカニズムを，主として日本の同時代の戦艦と比較して考察してみよう。