AIIBも「一帯一路」も「国家の剣」政策も、中国の問題意識は共通

摘要

中国経済を専門とするジェトロアジア経済研究所の大西康雄•上席主任調査研究員によると、近年の中国 経済を概括する言葉として定着している「新常態（ニューノーマル）」には、次のような問題意識が込められて いるという。すなわち、中国は現在「中所得国の罠」に直面しており、この罠を突破して先進国になるためには ①高度成長から中高度成長への転換②経済構造の絶えざる最適化とグレードアップ③成長のェンジンを生 産要素投入拡大からイノベーション（技術革新）に転換すること--などが必須の条件であるとするものだ。 そして、その「罠」は対外経済面においては、中国が従来有していた競争優位(特にコスト優位)性が失われる という形で現れている。こうした情勢に対応して新たな競争優位を獲得するために、中国としては対外経済 政策を調整する必要に迫られている。昨年、中国主導で発足したアジアインフラ投資銀行（AIIB)も、先に北 京で開催された「ー带一路」国際会議も、こうした問題意識に端を発していると識者はみている。欧米からの ミックス古紙輸入禁止というショッキングな話題で一躍関心を集めた「国家の剣」政策もまた、根っこにある 考え方は同じなのではないか。欧米から輸出される「ミックス古紙」という名の廃棄物で国民の健康を守れな いような国は先進国とは言えない、という使命感あるいは矜 恃のようなものを感じる。