人工香料および紫外線吸収剤による水環境の汚染と地球温暖化の影響

摘要

人工香料や紫外線吸収剤は，医薬品類に比較すると水環境中の汚染状況や生態毒性に関 する研究が遅れており，物質別の生産量等のデータも十分に管理されていない。さらに， 生態リスクや非意図的な暴露経路によるヒトへのリスク評価もまれである。しかし，ここ 数年の間に関連研究が増え始め，日本の水環境中にも人工香料や紫外線吸収剤が高濃度で 存在することが明らかになっている。さらに，一部の紫外線吸収剤は，下水処理場におけ る除去率が低いことも報告されている。 人工香料や紫外線吸収剤は難分解性で生物蓄積性を有し，水産生物への蓄積や潅漑用水 を介した農産物への移行，水道水中への残存が懸念される。オーストラリアでは下水処理 水の飲料化にさいし，これらの汚染物質の環境中挙動や安全性について検討されている。 今後，日本でも下水処理，浄水処理過程での挙動やヒトおよび生態リスクアセスメントに 関する調査研究を進める必要がある。