大学は知的資本立国の源泉となりうるか

摘要

教育は国家の最重要な政策であることは論を侯たない.戦後の教育改革によって高等教育が国民各層に浸透し国民の知的水準の向上と健全な社会の形成に寄与したこと,産業における技術革新が進展し国際争力が強化されたことは紛れもない事実である.一方,多様化する社会に迅速に対応する教育改革が継続的に行われたかについては疑問を残す.2004年に導入された国立大学法人化の意図は,大学が自ら大学改革に取り組み現代社会が直面する諸課題に柔軟かつ迅速に対応できるよう,国立大学を政府の内部組織の桂楷から解放して自律的行動を促すことにあった.混迷に陥った社会を救う期待は自由な幅広い発想を根源とする大学に寄せられている.今年3月に国立大学法人は第1期中期計画を終了し,多くの間虜を抱えつつ第2期に入った.期せずして政治・経済分野にも大学に深刻な影響を与えかねない状況が生じている.現時点において国立大学法人を取り巻く諸問題を議論し今後の高等教育戦略の端緒を考えてみたい.