脳の視床枕の機能解明 產総研 知覚の「確信度」を決定していた 様々な意識障害の解明に期待

摘要

産業技術総合研究所ヒューマンライフテクノロジー研究部門の小村豊主任研究員らは、脳の深部にある「視床枕」領域の神経活動が、目の前で見えている世界の主観的な確からしさである「確信度」に影響していることを突き止めた。サルに行動心理学的手法を適用して、神経活動の動きや行動変化を調べて明らかにした。研究は科学技術振興機構：戦略的創造研究推進事業個人型研究(ささがけ)の一環として行われ、成果は英国科学誌「Nature Neuroscience」オンライン速報版5月12日号で発表された。視床枕はマウスなどのげっ歯類には存在せず、霊長類の脳では大きな容積を占め、進化の過程で拡大し、霊長類の視床の最大容積を占めている。大脳皮質の視覚系皮質領域と密接に結合し、脳深部に左右一対で存在する領域で、一般的に右の視床枕には左視野からの視覚情報が入力される。視覚情報はまず第一次視野角に到達し、中次視野角にかけて色や動きなどの分析が進み、高次視野角にかけてこれら特徴が統合され、段階的に人の見ている内容が形成されていくと考えられている。一方で、人の意識にのぼる際にはこれだけでは不十分で、これら情報がどの程度確からしいかを計算する過程が必要だと近年の研究では示されている。