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摘要

マウスの研究で、脂肪細胞から分泌される特定のタンパク質が前立腺ガンの進行に重大な役割を果たしていることが明らかになった。今回発見された機構は、肥満が前立腺ガンの悪性度に影響を及ぼすとする学説をさらに裏付けるものであり、新たな前立腺ガン治療法の開発を促進するかもしれない。悪性前立腺ガンのリスクが高まることと肥満の関連を裏付ける証拠が積み上がってきているが、その基盤となる機構は、これまでのところ解明されていない。今回、C・Mullerらは、培養したマウスとヒトの脂肪細胞から、CCL7タンパク質が分泌されること、前立腺ガン細胞が発現するCCR3受容体にCCL7が特異的に結台すること、そして、この結合が、前立腺ガン細胞の移動と播種の引き金になっていることを明らかにした。約40匹のマウス(高脂肪食を与えたものと通常の食餌を与えたものが混在)を対象とした研究を行い、肥満マウスは脂肪組織が多いために、前立腺ガン細胞の局所浸潤が増大することを見いだした。また、組織標本から得たヒト前立腺ガン腫瘍でのCCR3受容体の発現が、悪性前立腺ガンと前立腺周囲脂肪組織の前立腺から外へのガン細胞の移動と関連していることを明らかにした。今回のマウスを使った研究結果を将来的な前立腺ガン患者向けの治療薬の開発に利用できる可能性があるという考えを示している。(ネイチャー・コミュニケーションズ電子版)。