金属酸化物粉末の同定と評価のための新規構造指標としての電子トラップ密度のエネルギー分布に関する研究

摘要

金属酸化物粉末は触媒，光触媒，センサー，電極などの原料として幅広くかつ多量に利用されており，機能性材料としての性能は粉末の構造特性によって支配される。しかし，化学式で表される組成と粒径以外の構造情報が示されることは稀であり，組成•粒径がほぼ同じであってもその性能は異なることが多い。これは，組成•粒径だけでは機能性材料として同定できず，性能を支配する構造特性の評価法が開発されていないといえる。金属酸化物粉末の同定•構造評価法が存在しないのは，組成によつて特定されるバルクの構造だけでなく，特性や性能に強い影響を与える表面の構造を特定する必要があるからである。これまで，表面構造の解析は微視的な観測に限られており，全体として把握するための普遍的な評価法はなかった。したがって，表面構造を反映する巨視的なパラメータが得られれば，金属酸化物粉末の同定および性能と直結する構造特性の評価が可能となると予想される。そこで，おもに粉末表面に存在する電子トラップ密度のエネルギー分布(energy-resolved density of electron traps=ERDT)に着目した。