「言い，伝えたいこと」: 包装工程(6);流通•物流

摘要

本稿の今年5月号〜前9月号までの5回にわたり，「包装工程」として，設計から生産に至る，一般的には，一つの工場内において，ハードとしての製品を完成させるまでの主な各工程について，その考えるべきこと，注意点などを提示してきた。今月号では，この製品が財貨としての商品になる，ソフトが中心の流通（商流·販売/物流)，そして，包装が関与するハードが中心の物流（輸送•保管•荷役•情報•流通加工）としての消費者への最終工程を取り上げることにした。なお，今後として，次号の11月号では，包装の開発，改善，そして，そのフォロー·アップなどについて取り上げ,最終の12月号では，この包装工程のまとめや今後について，皆さんと一緒に考えてみたい。今回のこの工程は，今までの各工程と大きく異なる点が，二つあり，その一つは，今までのそれらは，工場内という，ある限られた範囲のなかでのことであり，それだけに管理は容易であった。しかし，この工程は，外部の工程であり，管理が行き届きにくいということである。もう一つは，われわれ包装を含めた物流の三大使命としての「品質の保護丄「サービスの向上」,「費用の適正化」の評価を受ける最終の段階であるということである。皆さんも知っているように，戦後の復興，高度経済成長の時代などを経て，近代における社会，経済での身近ななかで，大きな変革の一つが，流通，物流である。すなわち，街の中，駅の中，前のコンビニエンスストアであり，郊外の大きなスーパーマーケット，ショッピングモール，宅配便，通信，テレビジョンゃ，インターネットなどでの流通，物流などである。今の皆さんにとっては，当たり前のように感じるこれらも，包装を含めた物流，流通，ITなどの進化があってのことである。そして，その時代的な背景としては，高度経済成長の時代でのメーカー主導の流通，物流の体制，各種の規制，価格の統制などから，その後のこれらの体制の変化，規制の緩和，価格競争の激化などもこれらに大きく影響をしていることは，確かである。筆者のように，この典型的な商品としての家庭電化商品の業界での流通，物流を生きてきた者には，その実感には，非常に強いものがある。それだけに，その時代を経てきて，現代における包装をみると，何か異なるものを感じることがある。すなわち，欲しい時代の包装と当たり前のそれでの包装に対する期待，要望，価値観など，その見方の違いを感じる。それは，今に生きる若い人達と過去を持ち，年齢を経たわれわれとの大きなギャップでもある。これは，当然のことながら，包装だけに限ったことだけではないが。すなわち，われわれは，包装された商品の社会，経済などでの位置付けをしっかりと把握する必要があると同時に，その位置づけが，時代とともに変わっていくということであり，前述の物流の三大使命に対する優先の順位が変わるということである。その点では，ここでの輸送包装よりも，商業包装，消費者包装の方が敏感であることは，いうまでもないことではある。これらを考えると，1960年代の初期に来日した世界的な経済，経営の学者であるP.F.ドラッカー氏のその当時の日本の物流を見て，「物流は，経済の暗黒大陸である」と言う言葉の域は，現代は脱してはいるが，今後のこの工程の変革を予期すると，この言葉の持つ重みを再確認する今でもある。