5ALAと自家蛍光を併用した胸部悪性腫瘍に対する光学的診断の研究

摘要

肺癌術後胸腔内再発の一因と考えられる微小播種性病変(intrathoracic small dissemination)や早期の悪性胸膜中皮腫(malignant pleural mesothelioma)に対し、CT、 MRI、 PET等の画像診断や、手術時の可視による診断には限界があり、精度の高い評価、診断法が希求されている。我々は、自家蛍光（autoflu- orescence)に着目し、自家蛍光観察システムを使用した新たな光線力学的診断法（Ehotodynamic diagnosis ：PDD)の研究を行ったが、病変の描出や、正常と悪性病変の境界が不鮮明であり、更なる精度向上を目指してきた。そこで、光感受性物質（photo-sensitizer) である5ALA (アミノレブリン酸）に注目した。体外より摂取した5ALAは、ヘムの前駆体であるProtoporphyrinIXに代謝され悪性細胞内に留まり、630 nm程度の赤色〜ピンク色の発光作用（photo- genesis) を呈する。現在、脳腫瘍等の脳神経外科領域、膀胱癌、前立腺癌等の泌尿器科領域でその研究がなされている。5ALAを術前に経口投与後、自家蛍光観察システムを用いた悪性病変の観察を行い、正常組織が発する自家蛍光との色調の差により、精度の高い局在診断法の研究を行った。