アミノレブリン酸（5ALA）と自家蛍光観察システムを併用した肺癌胸膜播種（M1a）に対する光学的診断

摘要

肺癌術後胸腔内再発の一因と考えられる微小播種性病変や早期の悪性胸膜中皮腫に対し、画像診断や、手術時の可視による診断には限界があり、高精度の診断法が希求されている。我々は、自家蛍光に着目し、新たな光線力学的診断法（Photodynamic diagnosis; PDD）の研究を行ってきた。精度向上を目的に、光感受性物質である5ALA（アミノレブリン酸）に注目した。5ALAは5 ポルフィリン合成経路の出発物質であり、生体内の天然アミノ酸である。ミトコンドリアにおいてGlycineとSuccinyl CoA から合成される内因性のアミノ酸であり、ヘモグロビンの前駆体である。 体外から5ALA が入ると、正常細胞内ではヘムに速やかに代謝されるが、癌細胞は Porphobilinogen deaminase 活性が高く,ferrochelatase の活性が 低いため、蛍光物質であるProtoporphyrin IX が選択的に蓄積される。そのため、630nm 前後の赤色蛍光を発する。5ALA を術前に経口投与後、自家蛍光観察システムを用いた悪性病変の観察を行い、正常組織が発する緑色自家蛍光との色調差による診断法を胸膜播種診断に適応した。