放射線治療装置の品質管理における，光プローブ検出器を用いた光照射野幅とX線照射野幅の一致度の定量的評価

摘要

近年，X線による放射線治療では，治療装置に付属した照合撮影装置等を用いて治療前に画像照合を行うことが一般的になってきている.また，治療中の患者の動きや，金属マーカ等を利用した体内臓器の動きについても確認することが可能になってきている.しかしながら，患者の初期位置の設定については，レーザーポインタや光照射野が使用されることも多く，これらの機器は患者の位置を決定するために，未だ重要なツールである.特に，光照射野は患者の治療位置が確定した後，最終的なビームの入射位置の確認として使用されることも多い.このため，光照射野はX線照射野との幾何学的位置が一致している必要があり，本邦における放射線治療品質管理ガイドラインや米国医学物理学会（American Association of Physicists in Medicine: AAPM)が推奨するガイドラインにおいても，定期的に光照射野とX線照射野の一致性を評価するように推奨されている.現在，X線照射野についてはフィルムや放射線検出器等を使用して確認することが可能であるが,光照射野については金尺定規やグラフ用紙等を用いた視覚的な評価を行つている.更に，AAPMから出版されているReport No. 13(TG-24)やTG-45, IEC (International Electrotechnical Commission) 60976によれば,光照射野とX線照射野の一致性は，フィルムによって測定するとの記載があり，フィルム法によって測定された結果をAAPM Task Group 142(TG-142)の提案する許容値の範囲内であるかについて判断することを多くの施設で行っている.しかしながら，IEC 60976に記載されている放射線治療装置の照射野の幾何学的設定表示値と光照射野幅とのわずかなズレを，視覚的に評価することは困難である.光照射野については，グラフ用紙等の目盛り線と光照射野と影の部分の中線のズレを評価するため，測定者間誤差や測定間誤差を誘発する.レギュラーフィルムを用いる場合は，光照射野のピン打ちされた位置や黒化度などによっても，照射野幅の大きさは影響を受ける.