「交通事故と法医学」特集にあたって

摘要

法医学は、医学的解明を必要とする法律上の案件について、科学的で公正な判断を下し、個人の擁護や社会の安全に寄与することを目的としている。法医学には法病理学、法中毒学、DNA鑑定、物体検査、医事法、法歯学などの研究分野がある。大学医学部の法医学教室では医学生への法医学の教育、法医学に関する研究、法医解剖等の法医学の実務が行われている。交通事故による人の死亡は、医学的判断を要する法律上の問題であり、法医学の重要な課題である。交通事故の死亡者は全て異状死として届け出られ、警察官による検視と医師による検案が行われ、必要に応じて法医学者による専門的な検査が行われている。交通事故による損傷で死亡したことを証明し、加害車両を特定し、事故原因を解明するために必要な司法手続きである。交通事故による死亡者の法医学的検査では死因の診断と共に傷がどうやってできたのかを明らかにする必要があり、受傷機転の解析では交通事故の3要因である人体、事故車両、事故現場を視察して関速付けることが重要である。また、運転に影響を及ほす疾患やアルコールと薬物の摂取の有無を調べることは事故原因の解明に必要である。