空中における超音波センシング: 小特集にあたって

摘要

我々は，空中において生活しており，空中を伝搬する音波を，コミュニケーションや音源の存在や方向を知るために日常的に用いている。音波を発する物体の方向や移動を認識することは，計測の観点からいえば受動的な(passive)センシングである。一方，自らが音波を放射して，反射·透過音の情報から周囲の状況を計測することを能動的な(active)センシングと呼ぶ。このようなセンシングを行う生物としてコウモリが知られていて，夜間や光のない閉空間で高速な飛翔が実現されている。水中では，イルカがアクティブセンシングを行っており，センシングされた情報を用いて，高度な水中行動が実現されている。このように，周囲環境を効率的に取得するためには，アクティブなセンシングが重要で，音波センシングも有用な情報を取得できる手法であることが推察される。本小特集では，高度な応用が可能と考えられる空中における超音波センシングについて，超音波の送受，媒質中と物体境界での波動のふるまい，種々の応用技術について取り上げられている。