ベーシスリスクに着目した地震リスクデリバティブの設計手法に関する研究

摘要

代表的な巨大自然災害リスク（Catastrophic Risk）である地震リスクの減災対策としては，耐震設計法や耐震補強等のハード的な減災対策（リスクマネジメントの分野ではリスクコントロールと呼ばれる）だけでなく，リスクファイナンスを利用したリスク処理の重要性が広く認識されている。しかし，リスクファイナンスの代表手段である地震保険については，保険・再保険市場全体での保険引受能力（キャパシティ）の収縮や日本の地震リスクに関する引受条件の厳格化等の諸条件に伴い，そのリスク移転機能が十分に活用されていない状況といえる。特に，企業分野の地震保険についてはその傾向が強く，企業が合理的な地震リスクマネジメントを構築する際の支障となっている。このような背景から，近年，代替的リスク移転（以下，ART：Alternative Risk Transfer）と呼ばれる保険以外のリスクヘッジ手法が注目されている。