空港周辺の環境問題と硏究センターの果たす役割

摘要

航空機から発生する騒音はこの40年で約 20dB以上低減したと言われます。近年導入 されたB787などはB727などの時代に比べれ ば画期的に静かで柔らかな音色になっていま す。音を聞いて機種を判断することが、ある 種の楽しみにも感ぜられるくらいです。では、 航空機騒音問題は解決したのでしょうか？筆 者は決してそんなことはないと考えています。 昭和50年代以降、空港周辺の環境対策が進 められたことにより、激しい騒音にさらされ る地域や軒数は少なくなってきました。当時 の主力だったB747 (クラシックジャンボ）と 先の例に挙げたB787の騒音証明値（※)は 離陸地点で約20dB、着陸地点で約10dBの違 いがあります。それでも音が聞こえなくなったわけではないのです。テレビの音が聞こえ づらかったり、何かの折に「うるさいな」と 感じたりすることはまだまだあるでしょう。 さらに、航空旅客数の増大による航空交通の 発展に伴い騒音の発生回数は増加する傾向に あります。一方で、安心•安全などに対する 考え方から、個人や社会が環境の問題に関し てそれを許容する閾値がどんどん下がってい るとも感じます。その結果、騒音の程度が比 較的大きくない場合でも、飛行経路の変化な どによって騒音苦情が発生したりします。こ れらは法律に基づく環境対策が可能な範囲か らは遠い地域にあることがほとんどです。飛 ばし方の工夫などの努力だけでなく、空港と 周辺地域の社会的関係や信頼関係が空港周辺環境問題の大きさを左右するといってもおか しくないと思います。