豪州の設計業務細分化にみる変化に強い「個」と「組織」

摘要

日建設計に機械設備設計者として入社し約10年が経過した2017年、国際的な総合エンジニアリング会社の豪州にあるオフィスに出向する機会を得た。それから2019年までの2年間、出向先ではMechanical Engineerとして、オフィス、学校、ホテル、病院、空港などの設計に従事した。機械設備設計者とMechanical Engineer。同じように聞こえるが、日本と豪州とでは設計業務のスコ一プが大きく異なる。日本の機械設備設計者の場合、空調、衛生、消火、自動制御、環境計画など幅広い分野を同一人格でカバーしていることが多いが、豪州のMechanical Engineerは主に空調の設計のみを行い、その他の業務はそれぞれ別人格のエンジニアが担当する。これは機械設備に限ったことではなく、電気設備の場合は照明や通信、建築で言えばプロジェクト管理やファサードデザイン、防災計画などの役割が切り離されて、専門のコンサルタントがアサインされることが多い。このような設計業務範囲の違いが実は、人材育成、ワークライフバランスなどさまざまな面に影響を与えている。