小惑星探査機のタッチダウンサンプル採集ハイブリッドシミュレーション

摘要

2005 年，小惑星探査機MUSES-C が小惑星イトカワに到着し，イトカワ表面へタッチダウンタスクを実行した．そして2010 年6 月，地球に帰還した．このときのMUSES-C は姿勢制御用のリアクションホイールが3 基中2 基，化学燃料スラスタは全て故障など，まさに満身創痍であったが，地球上空から搭載カプセルを分離，オーストラリアのウーメラ砂漠へ落下させ，その運用を終えた．カプセル内からは数μ [m] のオーダーの物質が見つかっており，そのほとhどが地球由来の物質であることが判明しているが，2010 年10 月の段階で，地球上の物質と断定できない物質が見つかっている．これがイトカワの物質であることが断定されれば，人類は月以来の地球以外の物質を手にすることになり，これは太陽系初期の状態を知るための大きな手がかりとなる．これらの数々の功績により，さらなる小惑星探査への期待が高まり，新しい計画が立ちあがっている．例えば，探査機MUSES-C の後継機はやぶさ2 は，イトカワより始原的なC 型小惑星を探査対象として検討されている．また日本と欧州共同で開発が見込まれているはやぶさMK2 は，枯渇彗星などをを探査対象として検討されている．小惑星の表面サンプルの採集においては，微小重力環境下であるため，また，小惑星表面の詳細が未知であるために採集が困難となっている．MUSES-C プロジェクトではこの問題に対し，アンカードリルを用いるなど，いくつかのサンプル採集手法について提案し，その上で最も有効な採集手法として，タッチダウン手法を採用した．この手法では小惑星表面に接触し，その際にプロジェクタイルと呼ばれる弾丸を小惑星表面に撃ち，表面を破砕する．破砕した表面サンプルを採集した後，ただちに離脱するという手法で，小惑星表面の詳細が未知であってもサンプルの採集が可能である．