基礎的行動プリミティブの履歴情報学習によるコミュニケーションの萌芽

摘要

我々の祖先はいったいどのようなコミュニケーション形態を発明し，定着させ，そして変化させてきたのだろうか．原始のコミュニケーションは，遙かに単純なものだったのではないかと推測される．本論では，音声よりもジェスチャーを言語の起源として考える「ジェスチャー理論」に基づき，基礎的行動プリミティブをコミュニケーション上の記号として用いてコミュニケーションを成立させられるようになるかどうかを議論する．複数のエージェントが衝突を回避しながら自身のゴールへ向かう「衝突回避ゲーム」、およびそのゲームプレーヤとして基礎的行動プリミティブの履歴情報を学習できるように拡張したQ学習エージェントを採用する．このQ学習エージェントは，カメラ（視線）方向を変えることで周囲を見渡すことのできる対向2輪型である．シミュレーション実験の結果，一時刻前の最近傍個体の進行方向と視線の角度情報のいずれかを他の情報と一緒に参照することで，衝突回避，およびゴール到達能力を比較的大きく向上させられることを確かめた．この結果は，エージェントが現在と過去の最近傍個体の視線の角度情報，および自身の視線方向を左右に動かすという基礎的行動プリミティブをコミュニケーション上の「記号」として利用して衝突回避を実現したことを示唆するものである．